【2026年4月施行】「130万円の壁」の判定方法が変わる!扶養認定の新ルール完全解説(2026.3.11)
【2026年4月施行】「130万円の壁」の判定方法が変わる!扶養認定の新ルール完全解説
第1章. なぜ制度が変わるのか?「就業調整」問題の背景
これまでの被扶養者認定では、認定対象者の「今後1年間の収入見込み」を判定基準としており、残業代など所定外賃金の見込みも含めて算定する対応をしてまいりました。そのため、たとえ労働契約上の所定内賃金が130万円未満であっても、予期せぬ残業が発生した場合等に扶養から外れてしまうリスクがありました。それを避けるため、基準ギリギリの被扶養者は年末近くになると就業調整をして扶養範囲内で働く事が大きな問題となっており、働きたくても働けない状況が生まれ、労働力不足の一因にもなっていたのです。
こうした課題を解消するため、新制度では客観的な書類である労働条件通知書等に記載された契約内容(時給・労働時間・日数等)を基に年間収入見込額を算出し、それを判定の基礎とすることになりました。予測困難な残業代による扶養外れのリスクを制度的に排除することが、今回の改正の最大の目的です。
第2章. 新制度の核心:「労働契約ベース」の収入判定
(1) 基準額と対象者別のまとめ
| 対象者の属性 | 基準額(年間収入)
|
| 原則(一般) | 130万円未満
|
| 19歳以上23歳未満の者(被保険者の配偶者を除く) | 150万円未満 |
| 60歳以上の者 | 180万円未満
|
| 障害者等 | 180万円未満
|
※ 障害者であっても、障害年金などの給与以外の収入がある場合は、この新制度による判定は適用されません。
※ 若年層特例(19歳以上23歳未満)は、被保険者の配偶者には適用されません。
(2) 残業代は収入見込額に含めない
例えば、労働契約書では残業なしの設定であったにもかかわらず、実際の業務で経常的に残業が発生しているケースでも、その年度においては「一時的な収入変動」とみなし、当初の労働契約に基づいた年間収入で判定されます。
ただし、「残業代を含めた年収」と「労働契約ベースの年収」に大きな乖離がある場合は、後述の適否確認で確認される点に注意が必要です。
第3章. 扶養者(被保険者)との収入関係の要件
年間収入が基準額未満であることに加えて、被保険者との生計関係に応じた以下のいずれかの要件も満たす必要があります。
【被保険者と同一世帯の場合】
認定対象者の年間収入が被保険者の年間収入の2分の1未満であること。ただし、被保険者の収入を上回らない範囲で、日本年金機構等が世帯の生計状況を総合的に勘案して被保険者が生計維持の中心的役割を果たしていると認める場合は、2分の1以上でも扶養認定される場合があります。
【被保険者と別世帯の場合】
認定対象者の年間収入が、被保険者からの仕送り等の援助額より少ないこと |
第4章. 新制度が適用されない例外ケース
全ての人に新しい判定方法が適用されるわけではありません。以下の場合は、従来どおり収入証明書や課税(非課税)証明書等で実際の収入を確認して判定します。
- 労働条件通知書など、労働契約の内容が確認できる書類が存在しない場合
- 給与収入以外に、他の収入(年金収入・事業収入・障害年金など)がある場合
これらのケースでは、保険者(協会けんぽ・健康保険組合等)が収入証明書等の提出を求め、従来の方法で判定することになります。
第5章. 手続きと必要書類
(1) 被扶養者認定時の提出書類
新制度による認定を受ける場合、以下の書類が必要です。
・ 労働条件通知書など、労働契約の内容が確認できる書類(必須)
・ 健康保険被扶養者(異動)届の「扶養に関する申立書」欄への認定対象者本人による記載、または本人作成の申立書(「給与収入のみである」旨)
(2) 労働条件が変更になった場合は届出が必要
【実務上の注意】契約更新のたびに届出が必要となる場合があるため、被保険者(扶養者)側でも労働条件の変更時には速やかに手続きを行う意識が重要です。
第6章. 認定後の継続確認(検認)と収入超過時の対応
(1) 年1回以上の適否確認
(2) 結果的に収入が基準額を超えた場合の救済措置
なお、一時的な収入変動かどうかの確認のため、「年収の壁・支援強化パッケージ」における事業主証明の提出が求められることもあります。
(3) 不正申告には厳しい対応
第7章. 適用開始時期の注意点
本制度は令和8年(2026年)4月1日から適用されます。具体的には、認定日が2026年4月1日以降のものから新制度が適用され、それより前の日付に遡って認定を行う場合は従来の方法で判定されます。
第8章.Q&A
Q1. なぜ労働契約内容によって年間収入を判定することにしたのでしょうか?
A:認定対象者の年間収入については、認定対象者の過去の収入、現時点の収入または将来の収入の見込みなどから、所定外賃金の見込みを含めた今後1年間の収入見込みにより判定をしているところですが、就業調整対策の観点から、被扶養者認定の予見可能性を高めるため、労働契約段階で見込まれる収入を用いて被扶養者の認定を行うこととしたものです。
Q2. 労働契約で定められた賃金から見込まれる年間収入が130 万円未満であるとは、具体的にどのような場合でしょうか?
A:労働条件通知書等の労働契約の内容が確認できる書類において規定される時給・労働時間・日数等を用いて算出した年間収入の見込額が130 万円未満等である場合を想定しています。そのため、当該書類上に明確な規定がなく予め金額を見込み難い時間外労働に対する賃金等は年間収入の見込額には含まないこととなります。
Q3. 労働契約内容が確認できる書類がない場合、どのように年間収入を判定するのでしょうか?
A:労働契約内容が確認できる書類の提出がない場合は、従来どおり、給与明細書、課税(非課税)証明書等により年間収入を判定することとなります。
Q4. 労働契約に明確な規定がなく労働契約段階では時間外労働の見込みがなかったが、扶養認定時点では経常的に時間外労働が発生している場合は、どのように年間収入を判定するのでしょうか?
A:労働契約に明確な規定がなく労働契約段階では時間外労働の見込みがなかったのであれば、扶養認定時点で時間外労働が発生していたとしても、当年度においては一時的な収入変動とみなし、今回の取扱いにより年間収入を判定することとなります。
Q5. 給与収入以外に他の収入(年金収入や事業収入等)がある場合、年間収入はどのように判定するのでしょうか?
A:従来どおり給与明細書、課税(非課税)証明書等により年間収入を判定することとなります。
Q6. 被扶養者の認定の適否に係る確認について、どのように実施すべきか。
A:認定年度において被扶養者の認定の適否に係る確認を行う必要はないですが、翌年度以降少なくとも年1回は保険者において被扶養者の認定の適否に係る確認を行い、被扶養者の要件を引き続き満たしていることを確認してください。
なお、被扶養者の認定の適否に係る確認においても、認定時と同様に労働条件通知書等の労働契約内容が確認できる書類を確認することにより実施しますが、労働契約の内容が確認できる書類が存在しない場合には従来どおり勤務先から発行された収入証明書や課税(非課税)証明書等を確認することにより実施します。
また、労働契約内容が確認できる書類により認定の適否の確認を実施する場合においても、実際の年間収入との乖離を確認するために勤務先から発行された収入証明書や課税(非課税)証明書等の提出を求めても差し支えありません。
Q7. 「社会通念上妥当である範囲」とは具体的にどのような範囲を指すのでしょうか?
A:社会通念上妥当である範囲については、
・ 仮に具体的な金額を設定した場合、当該金額が新たな「年収の壁」となりかねないこと
・ 社会通念上妥当とは、社会一般に通用している常識や見解に照らして妥当という意味であり不変的なものではないこと
・ 当該臨時収入が、恒久的な勤務時間の増加を伴わない一時的な事情等による場合もある等、金額のみでは判断が困難であることから一概にお示しすることは困難です。
Q8 労働契約の更新が行われた場合や労働条件に変更があった場合には、当該内容に基づき被扶養者に係る確認を実施することとし、条件変更の都度、当該内容が分かる書面等の提出を求めることとされているが、時給、所定労働日数等に変動がない、単なる契約期間の更新においても内容が分かる書面等の提出を求めなければならないのでしょうか?
A:内容に関わらず、労働契約の更新が行われた場合や労働条件に変更があった場合には、その都度、内容が分かる書面等の提出を求めてください。
第9章. まとめ:新制度のポイント早見表
| 項目 | 新制度の内容 |
| 適用開始 | 令和8年(2026年)4月1日以降に認定日があるもの |
| 判定基準 | 労働条件通知書等に基づく年間収入見込額 |
| 残業代の扱い | 年間収入見込額に含めない(予見困難なため) |
| 基準額(原則) | 130万円未満 |
| | 60歳以上・障害者は180万円未満 |
| | 19〜22歳は150万円未満 |
| 必要書類 | 労働条件通知書等+本人による「給与収入のみ」の申立て |
| 条件変更時 | 都度届出・書面提出が必要 |
| 適用外のケース | 労働契約書類がない場合、給与以外の収入がある場合 |
| 収入超過時 | 「社会通念上妥当」な範囲の臨時収入なら認定取消不要
|
この制度改正は、パートやアルバイトで働く方が安心して就業できる環境整備に向けた重要な一歩です。特に、労働条件通知書等の適切な管理・保管が実務上のカギとなります。手続き方法や個別ケースへの対応については、お専門家にご相談ください。
【投稿者:社会保険労務士 大髙 秀樹】
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