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【第6回】令和8年度 労働保険年度更新!労働保険特別加入のすべて ―― 法改正とQ&A(2026.2.19)

【第6回】令和8年度 労働保険年度更新!労働保険特別加入のすべて ―― 法改正とQ&A

 

 1. 2月の今、特別加入を検討するあなたは「本物のプロ」である

 

2月のまだ冷たい空気が残るこの時期に、すでに労働保険の年度更新や特別加入に思考を巡らせている経営者の方は、実はそれほど多くありません。

多くの企業が目の前の売上や現場対応に追われる中で、半年先のリスクにまで意識を向けている。その視野の広さと責任感こそが、会社を支える大きな力です。大切な仲間やご自身を守るための「誠実な準備」は、必ず長期的な安定成長の土台となります。本記事では、先を見据える皆様のために、実務に直結する急所を専門家の視点から詳説します。

 

 

 2. 労働保険「特別加入制度」の深層

 

労災保険は、労働者の業務上の事由による災害または通勤途上における災害に対する保護を主な目的とする制度でありますから、事業主など労働者以外の業務災害等は本来ならば保護の対象となりません。  また、海外の事業場に派遣された者については、労災保険法の適用が日本国内の事業場に限られることから、労災保険法の保護の対象になりません。  しかしながら、中小事業主等の中には、その業務や通勤の実態、災害発生状況からみて労働者に準じて保護するにふさわしい者がいます。

  そこでこれらの労災保険の適用がない者に対しても、労災保険本来の建前をそこなわない範囲で労災保険の加入を認めようとするのが特別加入制度です。 

 では、なぜ労働者のための災害保障に何故事業主等の加入が認められたのでしょう?これには、特別加入制度が創設された昭和40年頃の零細企業の事業主は実態が非常に労働者と同じような者であったことと、労災保険の強制加入の実効性を確保する観点からも、その事業主を一括して労災保険に加入することを認めることによって零細企業の労働保険の加入を促進する面も強かったのです。

 

2) 加入対象者の区分

 

A. 中小事業主等(第一種):下記規模の事業主および家族従事者。

・ 金融・保険・不動産・小売:50人以下

・ 卸売・サービス:100人以下

・ 上記以外の業種:300人以下

 

B. 一人親方等(第二種):建設業、個人タクシー、フリーランスなど26業種。

 

C. 海外派遣者(第三種):日本国内の事業場から海外へ派遣される労働者・事業主。

 

 3) 令和611月「フリーランス」への対象拡大

省令改正により、IT、芸能、家事代行など、あらゆる職種のフリーランスが加入可能となりました。「特定フリーランス事業」として区分されますが、建設業等の一人親方は従来通り既存の団体を通じて加入する必要があります。

 


 3. 申請手続きと「給付基礎日額」の選定

 

1) 申請のフロー

 中小事業主等は「労働保険事務組合」へ、一人親方等は「特別加入団体」を通じて労働局へ届け出ます。加入効力は、原則として届出日の翌日からとなります。

 

2) 給付基礎日額(3,500円〜25,000円)の罠

特別加入者の保険料は『給付基礎日額』に応じて算定されます。給付基礎日額とは、特別加入労災の保険料や支給額等の計算基準となるものです。

一般の労働者の場合、労働時間に対して支払われた賃金総額に保険料率を乗じる形になりますが、特別加入者は3,500円〜25,000円の16段階の中から任意で設定した365日分の給付基礎日額に、それぞれの事業に定められた保険料率を乗じて算出します。

給付基礎日額が高ければ高いほど、保険料そのものも高くなりますが、その分手厚い保証を受けられるということです。適切な給付基礎日額を設定するには既に加入している災害保険の給付金等と比較したり、ご自身の年間所得や生活費などを考慮すると良いでしょう。

但し大幅に実態から乖離しており必要があれば、本人の所得を証明する書類等を求められる場合があります。

特別加入者の給付基礎日額は、年度単位(4月から翌年3月)で変更することができ、変更については、事前にご加入の事務組合に確認願います。

 

 

4.労働保険事務組合制度とは

 

中小企業の事業主団体が、その構成員である事業主等の委託を受けて、事業主に代わって労働保険料の申告・納付その他労働保険に関する各種の届出等の事務手続を行うことにより、中小事業主の事務処理の負担を軽減し、労働保険の適用促進及び労働保険料の適正な徴収を図る制度です。

労働保険事務組合としての業務を行うには、厚生労働大臣の認可が必要で、労働保険事務組合は、委託事業主の労働保険料の申告・納付、各種届出等を委託事業主に代わって、まとめて政府に行うことになります。政府は、事業主の労働保険料に関する各種通知は、労働保険事務組合に対して行うことになります。

 

事務組合の各地の団体名・所在地・連絡先の調べ方ですが、各地の全国労働保険事務組合連合会の各支部を確認するのが簡単であります。東京都の連絡先等については下記になります。

 

一般社団法人全国労働保険事務組合連合会 東京支部

( https://www.rouhorentokyokai.org/union-members/ )

 

 

  5. 【重要】今後の法改正の方向性

 

令和8年度に向けて、以下の動きが加速しています。

 

1. 暫定任意適用事業の廃止:5人未満の個人農林水産業等も順次強制適用へ。

2. 団体の指導監督強化:サポート体制が不透明な団体への承認取消要件が法令化されます。

3. 家事使用人の適用検討:家政婦などの家事使用人への適用拡大。

 

 

6. 実務Q&A:現場の疑問に答える

(1)今度、開業して経営者になりました。自分で労働基準監督署に行って、特別加入の手続きはできますか?

A特別加入は自分で直接加入手続きをすることはできません。事務組合・一人親方団体等を通じて加入手続きを行う必要があります。

 

2)中小事業主の企業規模を満たす事業主は、全員特別加入できるのですか?

 A中小事業主で、年間を通じて労働者を使用する日数が100日に満たない場合は、中小事業主等の特別加入をすることができません。

労働者を通年雇用しない場合であっても、1年間に100日以上労働者を使用している場合には、常時労働者を使用しているものとして取り扱われます。

 

(3)執行役員の労働保険をどのように取り扱ったらよいですか?

A: 一般的には、特別加入ではなく一般労働者として労災保険に加入することになります。執行役員は商法で定められた取締役ではなく、「役員」という名前が付いているものの、会社経営に参画する権限がなく契約形態が雇用型として契約するものと考えます。特別加入ではなく、一般の労働者として労災保険に加入するのが一般的です。

 通常は契約形態が委任契約の場合は役員として、特別加入をして労働保険に加入いたします。但し委任契約の場合であっても、実態として労働者性が認められる場合は、労働者として判断されますのでご注意願います。

 

 4)特別加入者証を紛失しました。再発行するにはどうしたら良いでしょうか?

 A:ご加入の事務組合・一人親方団体に連絡してください。組合・団体によっては再発行手数料がかかる場合がありますのでご確認願います。

 

 5)私は今まで建設業の一人親方でしたが、常時、労働者を雇用することになりましたこのまま一人親方労災を加入していて大丈夫でしょうか? 

A:加入要件を満たしませんので特別加入の脱退手続をすることになります。特別加入を続けたいという希望がある場合は一人親方の特別加入ではなく、 中小事業主の特別加入をお勧め致します。

 

 6)遡って特別加入をしたいです。(さかのぼって脱退したいのです)

 A特別加入は、原則としてさかのぼっての加入や脱退はできません。 これは、事故が起きてから加入することを防ぐ趣旨からのものです。なお、特別加入の効力が発生するのは、原則として、労働基準監督署へ提出した日の翌日からとなります。

 

 7)特別加入するにあたって、年齢の制限はありますか?

 Aご年齢に関係なくご加入いただけます。ただし、事務組合・一人親方団体によっては学生の方の加入を受付しない事務組合等があるようです。学生起業され特別加入されたい方は、事前に加入したい団体等にご確認することをお勧めします。

 

 8)私は中小企業を経営しております。従業員の労働保険成立手続は行わず、役員の労災特別加入制度だけに加入したいのですが可能ですか?

 A労災特別加入制度に加入することができるのは、社員・従業員の方々に係る労働保険の事務処理を、労働保険事務組合に事務委託することによって、はじめて経営者の方々も任意に労災特別加入制度に加入することができるものです。従いまして、一般従業員の労働保険事務の委託をせず、特別加入制度だけに加入することは出来ません。

 

 9)法人役員である私と父、他2名が労災保険に特別加入していますが、高齢になった父はこのたび会社の執行業務から離れ療養に専念することになりました。登記上は役員のままですが、父のみ特別加入から脱退することは可能でしょうか。

Aお父様のみ特別加入から脱退することは可能です。

 

中小事業主等に該当する方が特別加入の申請を行うときには、家族従事者や役員など労働者以外で業務に従事している方全員を包括して特別加入させることが必要です。

ただし、非常勤・高齢・傷病療養中等が理由で、ほとんど労災保険対象の業務に従事しない方については、特別加入対象者から除外することが出来ます。これは、加入中途で変更が生じた場合にも適用されます。特別加入の変更の手続は日付を遡ることは認められませんので、非常勤・高齢・傷病療養により業務に従事しなくなった場合はお早めにご相談ください。

 

 10)私は建設業の会社を経営しているものです。元請け会社から労災保険その他社会保険等に入らないと、現場に入れないと言われました何故なのでしょうか?

  A: 社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインを遵守しているためです。

 

社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインとは、国土交通省が策定している元請企業および下請企業の取組の指針となるガイドラインのことです。

 建設産業においては、健康保険、厚生年金保険及び雇用保険について、法定福利費を適正に負担しないいわゆる保険未加入企業が存在し、労働者の公的保障が確保されず、若年入職者減少の一因となっているほか、関係法令を遵守して適正に法定福利費を負担する事業者ほど競争上不利になるという矛盾した状況が生じている。

こうしたことから、行政機関や元請・下請建設業者団体、発注者団体等を構成員とする「建設キャリアアップシステム処遇改善推進協議会」等において、関係者が一体となって社会保険の加入対策を進めてきたところである。平成29年度以降については、元請企業に対し、社会保険に未加入である建設企業を下請企業として選定しないよう要請するとともに、適切な保険に加入していることを確認できない作業員について、特段の理由がない限り、現場入場を認めない取扱いを求めるなど、対策の履行強化を図ってきたところである。

 

 

 7. まとめ

 

「ここまで全6回、かなり専門的な話にお付き合いいただきありがとうございました。

正直、頭が痛くなった社長も多いはずです。

でも、『2月の今、この記事を読んでいる』。それだけで、あなたの会社の今年の年度更新は、もう半分以上成功したようなものです。今年の労働保険年度更新も頑張っていきましょう。

これからも「実直な量産」の精神で、皆様の経営をサポートし続けます。

 

 

 【完全保存版】労働保険年度更新 徹底解説シリーズ一覧

 

1話:「銀行の行列」を回避するスケジュールとプロの注意点

( https://www.ohtaka-sr.jp/info/20260130124803.html )

 

2話:[調査で狙われる「対象者・賃金の範囲」と、判断ミスの急所

( https://www.ohtaka-sr.jp/info/20260202195834.html) 

 

3話:『申告書』書き方の急所と初心者が間違えを回避する具体的方法( https://www.ohtaka-sr.jp/info/20260206155628.html )

 

4話:建設業のための労働保険年度更新攻略法を社労士が解説

( https://www.ohtaka-sr.jp/info/20260208102244.html) 

 

5話: Q&A|計算ミスした時の「訂正」は?分割払いやカード払いの注意点も解説

   ( https://www.ohtaka-sr.jp/info/20260212144430.html )

 


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