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【第5回】令和8年度 労働保険年度更新!| Q&A|計算ミスした時の「訂正」は?分割払いやカード払いの注意点も解説(2026.2.12)

【第5回】令和8年度 労働保険年度更新!| Q&A|計算ミスした時の「訂正」は?分割払いやカード払いの注意点も解説

 

労働保険の年度更新、申告書の記事をお読みいただきましてありがとうございました。 労働保険年度更新作業中に・計算が終わった後、ふと湧いてくる「これってどうなの?」という疑問。

「あれ、去年の数字が間違っていた気がする…」

「一括で払うのがキツイから分割にしたい」

「ポイントを貯めたいからカードで払える?」

 

社長様から毎年必ず聞かれる、これらの「実務的な疑問」に、Q&A形式でズバリお答えします。

 

 

 

Q1. 石綿(アスベスト)健康被害救済法に基づく「一般拠出金」とは何ですか。

 

A.「一般拠出金」とは、「石綿による健康被害の救済に関する法律」により、石綿(アスベスト)健康被害の救済費用に充てるため、事業主のみなさまにご負担いただくものです。石綿健康被害救済制度は石綿による健康被害の特殊性にかんがみ、石綿による健康被害を受けられた方及びそのご遺族で、労災補償の対象とならない方に対して、迅速な救済を図ることを目的として、「石綿による健康被害の救済に関する法律」に基づき創設された制度です。この救済に必要な費用は、国からの交付金、地方公共団体からの拠出金及び事業主からの拠出金によってまかなわれます。この一般拠出金は年度更新の確定保険料申告と併せて計算・納付を行う義務があります 。計算方法は非常にシンプルで、「確定保険料算定基礎賃金総額(千円未満切り捨て)」に「一般拠出金率(0.02/1,000)」を乗じる 。率が非常に低いため金額は少額になることが多いが、納付は義務であり、申告漏れは認められません。なお、雇用保険のみ適用される事業所や特別加入者は対象外となります 。

では、石綿に関係のない事業主もなぜ支払わなければならないのでしょうか?例えばIT企業やサービス業の経営者にとっては、「なぜ自社が石綿の費用を払わなければならないのか」という不満や疑問が生じると思います 。  

第一の理由は、石綿の汎用性にありました。以前は、アスベストは特定の産業のみならず、あらゆる産業の施設、設備、機械に使用されてきた 。例えば、オフィスの天井の吹き付け材、ブレーキパッド、配管の断熱材など、直接石綿製品を製造していない企業であっても、石綿の恩恵を間接的に享受してきた実態があります。  

第二に、責任の所在の不明確さである。石綿被害は数十年前に吸い込んだものが原因となるため、現在の発症者がどの企業の、どの製品によって被害を受けたのかを個別に特定することは実務上極めて困難である 。また、既に倒産した企業や、石綿使用を中止した過去の事業者から費用を徴収することも不可能に近いものです。  

つまり社会全体がアスベストの利便性を享受してきた以上、その影で生じた深刻な健康被害に対しても、社会全体でその費用を分かち合うべきであるという論理がこの制度の根底に流れているのです 。  

 

 

  

Q2. 法人の役員について、労災保険や雇用保険の対象に含まれるケースはありますか。

 

A.株式会社の代表取締役など、経営権・業務執行権を有する役員は原則として「労働者」ではなく「事業主」側とみなされるため、労働保険の対象外である 。しかし、取締役部長や取締役工場長のように、実態として「従業員としての身分」を併せ持ち、部長や工場長としての業務に対して賃金が支払われている「兼務役員」については、以下の取り扱いとなる 。労災保険: 業務執行権を持たず、工場のライン等で一般労働者と同様に作業に従事し、賃金を得ている場合は対象となる場合がある。雇用保険: 部長・課長等の職制上の地位にあり、報酬面からも労働者的性格が強く、雇用関係が明確であれば、労働者としての賃金部分についてのみ被保険者となることが可能である 。役員の雇用保険取得手続きにあたっては、定款・議事録他必要書類を添付のうえ「兼務役員雇用実態証明書」を取得届けと同時に提出し審査を受けることになります。労働保険年度更新にあたっては、役員報酬部分は除外し、労働者としての賃金部分のみを抽出して計上しなければならない 。

 この区分が不明確な場合、行政調査で全額否認されるリスクがある。

 

 

 

Q3. 他社から受け入れている派遣労働者の保険料は、わが社(派遣先企業)で支払う必要がありますか。

 

A.派遣労働者については、雇用関係は「派遣元(派遣会社)」にあるため、労働保険は派遣元で加入し、保険料も派遣元が支払う 。一方、労災保険については、派遣先での作業リスクを反映させるため、派遣先が負担する原則があるが、継続事業の事務処理上は派遣元がまとめて申告・納付を行う慣行となっている 。したがって、派遣先企業(受け入れ側)が、派遣スタッフに支払う派遣料金を年度更新の賃金総額に含める必要はない。

 

 

Q4. 当社は派遣会社(派遣元企業)です。いろいろな業種に社員を派遣しております。労働保険料の料率はどうしたら良いのでしょうか。

 

A.個々の事業に対する労災保険率の適用については、その事業における主たる作業の態 様、種類、内容等に基づき、「労災保険率適用事業細目表(昭和47年労働省告示第16号)」により事業の種類を決定し、労災保険率表による労災保険率を適用しております。 労働者派遣事業に係る労災保険率の適用についても、派遣労働者の派遣先での作業実態が数種にわたる場合には、主たる作業実態に基づき事業の種類を決定することとし、 この場合の主たる作業実態は、それぞれの作業に従事する派遣労働者の数、当該派遣労 働者に係る賃金総額等により判断することとしております。 なお、労働者派遣事業と他の事業を一つの事業として併せて行う事業であって適用上 一の事業として扱われるものについては、その主たる業態に基づき事業の種類を決定しております。

 


Q5. 外国人労働者を雇用していますが、労働保険の対象になりますか。

 

A.外国人労働者であっても、日本国内の事業所で使用される以上、原則として、国籍に関わらず労働保険の適用対象となります。雇用保険については、不法就労でない限り、所定労働時間等の要件を満たせば被保険者となります 。年度更新においても、日本人労働者と区別することなく、支払った賃金総額を算定基礎に含める必要があります。

労働保険には暫定任意適用事業と言いまして『常時使用労働者数5人未満の農業等で条件を満たす場合に労災に加入するかは任意』に言う制度があります。現在のところ、厚生労働省の労働政策審議会では小規模な農林水産業等に対し、労災保険を強制適用する方針すすめてはおりますが、現在暫定任意適用事業制度が残存しております。

では常時使用労働者数5人未満の農業等に外国人が就労する場合には労災保険に加入しなくて良いのでしょうか。これには法務省(出入国在留管理庁)が定める在留資格の審査基準および受入れ機関としての基準が関係してまいります。特定技能申請では、受入れ企業等は労災保険加入・社会保険加入・労働条件の明示・安全衛生の確保・が適正に行われているかを審査されます。ついては実質的に労災に加入することになるのです。迷われた場合には必ず専門家に相談されるようお願いします。

 

 

Q6. 賃金額を計算するのは、社会保険料や所得税を差し引く前の額か、後の額か、どちらを集計しますか。

 

A.必ず「差し引く前の額(総支給額)」を集計する 。労働者が実際に受け取る手取り額ではなく、会社が費用として発生させた賃金の総体をベースに保険料を算出するためです。賃金とは、給料・手当・賞与、その他名称のいかんを問わず労働の対償として事業主が労働者(被保険者)に支払うすべてのものをいいます(年度途中の退職者を含みます)。また、保険料算定期間中(令和741日~令和8331日)に支払いが確定した賃金は、算定期間中に実際に支払われていなくとも算入してください。

 

 

Q7. 通勤手当は所得税では非課税ですが、労働保険の賃金には含めますか。

 

A.これは実務担当者が最も間違いやすいポイントの一つです。所得税法上、通勤手当には一定の非課税枠があるが、労働保険においては「労働の対価」とみなされ、その全額(非課税限度額を超える分も含めて)を賃金総額に含めなければなりません 。中小企業の賃金台帳集計において、給与ソフトの設定が税務ベースになっていると、非課税通勤手当が自動的に除外されてしまい、労働保険料の「過少申告」を招く原因となりますので必ず「総支給額」の概念で集計する必要があります。

 

 

Q8. 退職金は労働保険料の対象になりますか。

 

A.退職時に支払われる一般的な「退職一時金」は、賃金には含まれません 。これは長年の功労に対する報償や後払い賃金的な性格を持つものの、通常の労働の対価とは区別されるためであります。ただし、近年増えている「退職金前払い制度」のように、毎月の給与や賞与に上乗せして支払われる形式のものは、その時点で賃金とみなされ、算入対象となります 。中小企業で退職金制度を改定した場合は、その支払い形態を再確認する必要がありますのでご注意願います。

 

 

Q9. 賃金額の集計に困っております。集計ツールがあると聞きました。賃金集計表のエクセル計算支援ツールはどこで入手できますか。

 

A.厚生労働省のホームページにて、エクセル形式の「年度更新申告書計算支援ツール」が無償で配布されている 。これに各月の賃金額を入力すると、申告書に記入すべき数字が自動的に算出されるため、手計算によるミスを防ぐために活用を強く推奨されております。公開場所は厚生労働省保ホームページ( https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouhoken.html )にあります。本日現在では令和6年度版が公開されておりますので、今年度使用時には必ず最新版の確認をお願いします。

  

 

Q10. 賃金総額を申告書に記入する際、端数はどのように処理しますか。

 

A.年度更新申告書に記入する「賃金総額」は、労災保険分、雇用保険分それぞれについて、合計額の「1,000円未満」を切り捨てて記入します 。例えば、集計した合計が54,321,987円であれば、申告書には54,321,000円(または千円単位の欄であれば54,321)と記載することになります。この切り捨て処理を忘れると、わずかではあるが保険料が過大に算出されることになります。

 

 

Q11. 計算の結果、保険料額に1円未満の端数が出た場合は?

 

A.算出された「確定保険料額」や「概算保険料額」に1円未満の端数が生じた場合は、その端数を切り捨てます 。これは国庫収納金端数処理法に基づくものであり、最終的な納付額は必ず円単位となります。

 

 

Q12. 令和8年度の概算保険料の計算で、前年度の賃金総額をそのまま使ってもよいですか。

 

A.原則として、今年度の概算保険料は「今年度中に支払う予定の賃金総額の見込額」に基づいて計算します 。しかし、中小企業の実務負担を考慮し、見込額が前年度の賃金総額の「50/100以上200/100以下(半分から2倍の間)」に収まる場合は、前年度の確定賃金総額をそのまま概算の算定基礎として使用することが認められております 。大幅な増員や減員、大規模な給与改定がない限り、前年度実績をスライドさせるのが一般的かつ安全な方法です。一定の要件を満たせば年3回に分けて納付する「延納」が認められる。これは中小企業にとって重要な資金繰り対策となる。

 

 

13.令和7年度確定計算をしたところ不足額が発生し、令和8年度概算保険料と合計すると40万円を超えます。概算保険料のみですと40万円未満ですが延納できますか。

 

A.延納することはできません。概算保険料額が40万円以上(労災保険・雇用保険のみ加入の場合は20万円以上、一括有期事業の場合も20万円以上)の場合、延納可能となります。

 

  

14.申告書を間違えて記入してしまいました。どうしたらいいのですか。

 

A.7の領収済通知書の納付金額以外であれば訂正できますので、訂正後の数字(文字)がわかるように書き直してください。訂正印の必要はありません。

 

 

15.領収済通知書の納付額を間違えて記入してしまいました。どうしたらいいのですか。

 

A.納付額の訂正はできませんので、新しい領収済通知書を使用してください。領収済通知書は最寄りの労働基準監督署及び労働局に用意してあります。なお、他都道府県の領収済通知書での納付はできませんのでご注意ください。

 

 

16.還付額があるときはどうしたらいいのですか。

 

A.申告書の提出と併せて労働保険料・一般拠出金還付請求書を管轄の労働基準監督署または労働局に提出してください。

 

 

17.特別加入者の給付基礎日額を変更したい場合には、いつ手続きを行えばいいのでしょうか。

 

A.特別加入者の給付基礎日額を変更する場合には、年度更新期間中に給付基礎日額の変更申請を行っていただくことになります。加入している労働保険事務組合や一人親方団体にお問い合わせください。

 

 

18.申告書の控えに労働基準監督署、労働局の受付印が必要なときはどうしたらいいのですか。

 

A.金融機関を経由して提出されると押印することができませんので、直接労働基準監督署または労働局へ提出してください。申告書と領収済通知書を切り離し、申告と納付を別々におこなうことができます。なお、郵送で提出される場合はお手数ですが返信用の封筒を同封くださいますようお願いいたします。

 

 

Q19. 年度更新を電子申請で行うメリットは何ですか。

 

A.主なメリットは、24時間いつでも申請可能、 窓口の受付時間を気にする必要がない、賃金額を入力すれば保険料が自動算出されるため、計算ミスを防げる、郵送費の削減: 申告書の郵送代や窓口への移動コストが不要になる、前年の情報を引き継げるため、入力の手間が省ける事等があります。メリットが多いので是非電子申請の活用をお願いします。

 

 

Q20. 電子申請にはどのような準備が必要ですか。

 

A.電子申請システム(e-Gov)を利用するためには、以下の準備が必要です 。GビズID(法人共通認証基盤)のアカウント、または電子証明書。e-Gov電子申請アプリケーションのインストール。パソコン環境(ブラウザの設定等) 。GビズIDの発行には数週間かかることもあるため、年度更新期間が始まる前に余裕を持って準備しておく必要があります。

 

 

Q21. 口座振替納付を利用するメリットと注意点は?

 

A.口座振替を利用すると、わざわざ金融機関の窓口に出向く必要がなくなります。最大のメリットは、納付期限が本来の710日から「9月中旬」頃まで延長されることです 。これによりキャッシュフローにゆとりが生まれます。ただし、あらかじめ「口座振替依頼書」を銀行に提出しておく必要があり、年度更新の申告書自体は期限までに別途提出しなければならない点に注意が必要である 。

 

 

Q22. クレジットカード払いは出来ますか?

 

A.原則として、労働保険料の納付にクレジットカードは利用できません。 ただし、例外的に、電子納付の場合に限り、一部のサービスでクレジットカード払いが可能な場合があります。

例えば、「Pay-easy(ペイジー)」を利用した電子納付では、一部の金融機関でクレジットカード払いが可能です。 しかし、すべての金融機関やクレジットカード会社が対応しているわけではありませんので、事前に確認が必要です。 また、クレジットカード払いの場合、決済手数料がかかる場合があります。現状では、労働保険料の納付は、現金納付、口座振替、電子納付(ペイジー、ネットバンキング)が主な方法です。 クレジットカード払いを希望する場合は、利用可能なサービスがあるかどうか、事前に確認しましょう。

  

 

Q23. 年度更新で計算ミスに気づいたら、どう対処すればよいですか。

 

A.もし申告後に計算の誤りに気づいた場合は、速やかに管轄の労働局または労働基準監督署に連絡し、「修正申告」または「更正の請求」を行ってください 。不足していた場合は 修正申告を行い差額を納付し多すぎた場合には 更正の請求を行い、過払い分を還付してもらいます。放置して調査で指摘されるよりも、自ら修正する方が心象も良く、付加的なペナルティを回避できる可能性がある。

 

 

Q24.税金面についての質問です。労働保険料の概算保険料はいつの経費となるのか?

 

A.法人税では上記のように規定をされています。

概算保険料は、会社負担分と個人負担分とで構成されています。このうち使用人分は、立替金として経理をします。

会社負担分は、原則は前払費用なので期間案分を必要としますが概算保険料にかかる申告書を提出した日か納付した事業年度の経費とすることができます。

 

 

【まとめ】

労働保険の年度更新、いかがでしたでしょうか? 全5回にわたり、制度の根底にある考え方から、現場で即座に直面する実務的な疑問まで、私なりの視点でお伝えしてきました。

年度更新は、単なる「数字の報告」ではありません。石綿被害への連帯責任や、現場で働く外国人労働者の保護、そして経営者自身の身を守る特別加入など、「働く人々を守るための決意」を更新する大切な手続きです。

もし計算中に手が止まったり、法改正の解釈に迷いが生じたりした際は、一人で抱え込まずに、ぜひお近くの社会保険労務士にご相談ください。私たち専門家が、貴社の「安心」を正確かつ迅速にサポートいたします。

 

 

【次回予告】

 

「年度更新、これで完結……」の予定でしたが、どうしてもお伝えしなければならない「最後の急所」が残っています。

 本シリーズへの多くの反響をいただき、急遽【特別編】の公開を決定いたしました。 テーマは、建設業の生命線である「労働保険の特別加入」です。

建設現場において、特別加入の更新漏れは単なる事務ミスでは済みません。それは「明日から現場に入れない」という、経営における死活問題に他なりません。

社労士だからこそ語れる、現場のリアリティを込めた「真の最終回」。 近日公開いたします。 ぜひ最後までお付き合いください。

 

 

▼ 【完全保存版】令和8年度 労働保険年度更新!徹底解説シリーズ一覧

 

1話: 「銀行の行列」を回避するスケジュールとプロの注意点

( https://www.ohtaka-sr.jp/info/20260130124803.html )

 

2話: 調査で狙われる「対象者・賃金の範囲」と、判断ミスの急所

( https://www.ohtaka-sr.jp/info/20260202195834.html  )

 

3話: 『申告書』書き方の急所と「初心者が間違えを回避する」具体的方法

( https://www.ohtaka-sr.jp/info/20260206155628.html  )

 

4話: 建設業のための労働保険年度更新攻略法を社労士が解説

( https://www.ohtaka-sr.jp/info/20260208102244.html  )

 

 

👉ご相談なら東京・中央区の社労士 大高労務管理事務所へ

(  https://www.ohtaka-sr.jp/  )

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