学生アルバイトの雇用保険・社会保険|原則除外と加入が必要な例外ケース(2026.4.19)

「学生アルバイトだから、保険の加入は不要だ」――そのような思い込みが、後になって大きなトラブルや遡及加入のリスクを招くことがあります。
実際、ハローワークによる調査で加入漏れが発覚した場合、原則として2年前まで遡って加入手続きを行う義務が生じます。さらに、賃金台帳や給与明細等で保険料天引きの事実が確認できれば、2年を超えての遡及適用も認められます。企業にとっては、予期せぬ追徴金や従業員からの信頼失墜につながりかねません。
本記事では、中小企業の経営者・人事労務担当者の方が実務で直面しやすい「学生アルバイトの労働・社会保険」について、社会保険労務士の視点から分かりやすく解説します。
【この記事でわかること】
① 学生アルバイトにも100%適用される「労働基準法」のルール
② 労災保険の適用範囲と事業主負担の原則
③ 雇用保険の「昼間学生は原則対象外」の例外ケース
④ 社会保険(健康保険・厚生年金)の加入判断基準
⑤ 掛け持ちアルバイトやマイナンバー対応の実務上の注意点
第1章.学生にも「労働基準法」は100%適用される
(1)「学生だから」という理由は通用しない
労働基準法は、「学生」「アルバイト」「パートタイム」といった雇用形態や就労者の属性に関係なく、雇用関係が存在するすべての労働者に適用されます。「うちのバイトは学生だから残業代は払わなくていい」「休憩を取らせなくてもいい」――このような認識は完全な誤りであり、法律違反となります。
特に以下のルールは、正社員と同じ水準で学生アルバイトにも遵守が求められます。

(2) 有給休暇の付与も義務です
学生アルバイトであっても、以下の2要件を満たした時点で年次有給休暇の付与が義務づけられます。
・ 雇い入れの日から起算して6か月間継続して勤務していること
・ その6か月間の全労働日の80%以上出勤していること
週5日勤務の場合は正社員と同様に10日間の有給が発生します。週の所定労働日数が少ないパートタイムの場合は、所定労働日数に応じた比例付与の対象となります。有給休暇の管理簿は5年(当分の間は3年)間の保存義務があるため、学生アルバイトを含む全従業員の有給管理を徹底してください。
第2章.労災保険:すべての学生アルバイトが対象
(1) 通勤中や勤務中のケガへの備え
労働者災害補償保険(労災保険)は、雇用保険とは異なり、週の労働時間や雇用期間にかかわらず、1人でも労働者を雇用しているすべての適用事業所において、その全従業員(学生アルバイト含む)に自動的に適用されます。
例えば、配達中の交通事故や工場での機械操作中のケガ、接客業でのお客様とのトラブルによる負傷など、「業務上」または「通勤途中」の負傷・疾病・障害・死亡は、すべて労災保険の補償対象となります。
(2) 保険料は全額「事業主負担」であることの再確認
労災保険の保険料は、全額が事業主負担となっており、従業員(学生アルバイト含む)の給与から天引きすることは一切できません。万が一、従業員の給与から労災保険料を控除していた場合は、労働基準法違反となる場合があります。
【社労士の視点】
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第3章.雇用保険:昼間学生は原則「対象外」だが、例外に注意
(1) 雇用保険の基本条件(週20時間以上・31日以上)
雇用保険は、適用事業所に雇用される労働者であれば、正社員・パート・アルバイトの別にかかわらず、本人の希望の有無にかかわらず被保険者となるのが原則です。パートタイム・アルバイトの場合、以下の2要件を同時に満たす必要があります。
| 加入要件 | 内容 |
| ① 週の所定労働時間 | 1週間の所定労働時間が20時間以上であること |
| ② 雇用見込み期間 | 31日以上の雇用見込みがあること |
(2) 昼間学生が被保険者とならない理由
上記の2要件を満たしていても、学校教育法第1条に規定する学校(大学・高校等)、専修学校、各種学校の昼間学生は、原則として雇用保険の「適用除外」となります。
これは、昼間学生の本業はあくまで「学業」であり、離職した際に「失業」として保護する必要性が低いと制度上判断されているためです。そのため、要件を満たすアルバイトを雇用していても、その方が昼間学生であれば、雇用保険の加入手続きは原則として不要となります。
(3) 重要!学生でも雇用保険に加入しなければならない「例外ケース」
昼間学生であっても、以下のいずれかに該当する場合は、例外として雇用保険の被保険者となります。実務上、見落としが多いポイントですので、必ずご確認ください。
(A)通信教育、夜間・定時制課程の学生
大学の夜間学部・高等学校の夜間や定時制課程・通信教育を受けている学生は、「昼間学生の適用除外」の対象に含まれません。したがって、週20時間以上・31日以上の要件を満たせば、一般の労働者と同様に雇用保険の被保険者となります。
(B) 卒業見込証明書を有し、卒業後も継続雇用される場合
「卒業見込証明書を持ち、卒業前に採用内定が出ており、卒業後も引き続き同一事業所に勤務する予定」の場合は被保険者となります。いわゆる「内定者のアルバイト先勤務」が継続するケースです。
(C)休学中の学生がフルタイムで働く場合
病気療養・海外留学等の理由で休学中の場合、実態として就労している期間中は雇用保険の被保険者となります。この場合、休学していることを証明する学校発行の文書(休学証明書等)の提出が必要です。また、事業主の命令または承認を受けて、雇用関係を維持したまま大学院等に在学する場合も被保険者となります。
【実務チェックポイント】
採用面接・雇用契約締結時に、学生であれば必ず「在学形態(昼間・夜間・通信・休学中等)」を確認し、雇用保険加入の要否を判断してください。確認を怠ると、加入すべき学生を見落とすリスクがあります。
第4章.社会保険(健康保険・厚生年金):条件を満たせば加入義務が発生
(1)「106万円の壁」と「130万円の壁」の整理
学生アルバイトが社会保険(健康保険・厚生年金)に加入しなければならないかどうかは、勤務先の規模や収入・労働時間によって判断が異なります。まず混同しやすい「収入の壁」を整理します。

特に注目すべきは、令和7年(2025年)10月からの制度改正です。19歳以上23歳未満の学生については、親の健康保険の扶養に入れる年収上限が従来の「130万円未満」から「150万円未満」へと引き上げられます。これにより、学生アルバイトの「働き控え」が一定程度解消されることが期待されています。
また「106万円の壁」の従業員51人以上の会社・週20h以上等の要件については、学校教育法に規定する高等学校の生徒、大学の学生等である場合には適用除外になりますので、十分注意願います。
学生であっても、「1週の所定労働時間」および「1か月の所定労働日数」が、同じ事業所で働く正社員の4分の3以上であれば、学生アルバイトであっても社会保険(健康保険・厚生年金)への加入義務が生じます。この「3/4規定」は、勤務先の従業員数に関わらず適用される、社会保険加入判断の最も基本的な基準となります。
(A)将来の年金額の増額
厚生年金に加入した期間は、将来受け取れる老齢年金額の計算対象に含まれます。学生時代であっても厚生年金に加入した期間は将来の年金増額につながるため、長い目で見た場合には本人にとってメリットとなります。
(B)手厚い傷病手当金などの保障
健康保険に加入すると、業務外の病気やケガで仕事を休んだ際に「傷病手当金」(標準報酬月額の約2/3を最長1年6か月支給)を受け取ることができます。国民健康保険にはこのような給付制度がないため、社会保険加入は学生アルバイトにとっても手厚い保障となります。
(C)親の扶養から外れる際の手続きと注意点
学生アルバイトが自ら社会保険に加入した場合、または収入が扶養基準(130万円・令和7年10月以降は19〜23歳未満は150万円)を超えた場合は、親の健康保険の被扶養者から外れる手続きが必要です。事業主(親の勤務先)は被扶養者の削除届を速やかに日本年金機構・健康保険組合等へ提出しなければなりません。
第5章.実務上の落とし穴:複数のアルバイトを「掛け持ち」している場合
(1) 雇用保険は「主たる賃金」の支払先で1か所のみ加入
学生が複数箇所でアルバイトを掛け持ちしている場合、雇用保険はその者が主として賃金を受ける事業所(「主たる賃金の支払先」)1か所のみで加入します。したがって、A社で週15時間・B社で週12時間の場合、それぞれは週20時間未満のため雇用保険の加入要件を満たしません。なお、令和4年(2022年)1月から「マルチジョブホルダー制度」が創設されており、現時点では65歳以上の労働者を対象に2事業所の合算で加入できる仕組みが設けられています。
(2) 社会保険の合算ルールと事務負担の現実
社会保険(健康保険・厚生年金)については、複数の事業所でそれぞれ加入要件を満たす場合、「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」の提出が必要となり、各事業所で按分した保険料を負担することになります。事務処理が複雑になるため、採用時に掛け持ちの有無を確認し、適切な対応をとることが重要です。
第6章.マイナンバーの提供と個人情報保護の重要性
(1) 雇用保険手続きにマイナンバーは不可欠
雇用保険被保険者資格取得届にはマイナンバー(個人番号)の記載が必須です。採用時に本人確認書類(マイナンバーカードまたは通知カード+顔写真付き身分証明書)を確認のうえ、個人番号を取得・管理する必要があります。個人番号は、特定個人情報として厳格な管理が法律上義務づけられています。
(2) 学生がマイナンバー提出を拒んだ場合の対処法
学生アルバイトがマイナンバーの提供を拒んだ場合でも、事業主は法律上の義務として加入手続き(資格取得届の提出)を行わなければなりません。ハローワークへの届出に際しては、「個人番号欄を空欄にしたうえで提出」し、提供を求めた経緯を記録として保管しておくことが実務上の対応となります。
第7章.まとめ
学生アルバイトに関する労働・社会保険の制度は、「学生だから特別扱いでよい」という単純なものではありません。適用される法律・保険の種類は学生の在学形態や労働条件によって異なり、事業主には正確な判断と適切な手続きが求められます。
「この学生は加入が必要か?」「掛け持ちバイトの場合はどうなる?」「休学中と聞いているが、証明書はどうすれば?」――このような判断に迷うケースは実務上少なくありません。グレーゾーンを放置することは、後のトラブルや遡及加入のリスクに直結します。
「学生アルバイトを多く雇用しているが、保険の手続きが正しいか不安」「これから採用を強化したい」というご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。
【最後に:経営者の皆様へ】
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
学生アルバイトの雇用保険や社会保険の手続きは、一見シンプルに見えて、実は「昼間学生の例外」や「法改正による上限緩和」など、非常に細かな判断が求められる業務です。
そんな不安を抱えながら経営を続けるのは、大きなストレスではないでしょうか。
当事務所では、画一的なアドバイスではなく、貴社の状況を丁寧にお伺いした上で、実務に即した確かな回答を差し上げることを信条としております。
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【投稿者:社会保険労務士 大髙 秀樹】
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