【社労士解説】無断欠勤への対応実務マニュアル|初動から給与・解雇の判断まで(2026.3.27)

従業員が突然連絡もなく出勤しなくなった~そんな事態に直面した経営者や担当者の方は少なくありません。「放っておけばよいのか」「すぐ解雇できるのか」と迷う場面も多いはずです。しかし、無断欠勤への対応を誤ると、後になって不当解雇として争われるリスクや、給与処理の法律違反を問われるリスクがあります。
本記事では、無断欠勤の基本的な定義から、初動対応・給与の取り扱い・解雇手続きまで、中小企業の経営者・担当者の方に向けてわかりやすく解説します。
第1章. 欠勤と無断欠勤の違い|法的な位置づけを確認しよう
(1)欠勤とは?
欠勤とは、労働者が本来出勤すべき日に出勤しないことを指します。労働契約は「労働者が使用者のために労務を提供し、使用者がその対価として賃金を支払う」という合意に基づくものです。したがって、労働者は正当な理由なく自分の都合で自由に休むことはできません。事前に連絡があったとしても、欠勤は労務提供義務の不履行、すなわち契約違反にあたります。
(2)無断欠勤とは?
無断欠勤とは、会社への事前連絡や承認なしに欠勤することを指します。法律上の明確な定義はありませんが、一般的には「正当な理由がなく、会社に連絡もせずに出勤しない状態」として扱われます。事前連絡があった欠勤と比べて、社内秩序への悪影響が大きく、より悪質な行為として懲戒処分の対象となり得ます。
| | 欠勤 | 無断欠勤 |
| 連絡 | 事前または事後に連絡あり | 連絡なし |
| 法的性質 | 労務提供義務の不履行 | 労務提供義務の不履行+秩序違反 |
| 処分 | 就業規則に基づき欠勤控除等 | 懲戒処分の対象となり得る |
担当者は、欠勤と無断欠勤を区別して記録・管理しておくことが、後のトラブル防止に直結します。
第2章. 従業員が無断欠勤をする主な理由
無断欠勤の背景にはさまざまな事情があります。「サボり」と決めつけて対応すると、後に重大なトラブルに発展することがあります。まずは考えられる理由を把握しておきましょう。
(1)うつ病・精神疾患の影響
メンタルヘルス不調(うつ病など)により、連絡すること自体ができなくなっている場合があります。この場合、安易に懲戒処分を行うと法的に無効となるリスクがあります(後述の第5章参照)。
(2)セクハラ・パワハラを受けている
職場内のハラスメントが原因で出勤できなくなっているケースです。この場合、会社側にも職場環境配慮義務の問題が生じます。欠勤の理由を丁寧に確認することが必要です。
(3)事件・事故・逮捕など身辺トラブル
交通事故や突発的な疾病、あるいは逮捕・勾留によって物理的に連絡できない状態になっている可能性があります。安否確認の観点からも、早期に緊急連絡先へ連絡することが重要です。
(4)退職意思があり連絡を絶っている
「辞めたいが言い出せない」「もう関わりたくない」という気持ちから、そのまま連絡を絶つケースです。この場合でも、会社は放置せず出社命令を出す必要があります。
(5)単純なミスや遅刻を隠したい
寝坊や忘れ物など軽微なミスがきっかけで、連絡しそびれたまま欠勤が続くケースです。初期段階で会社側が連絡を取ることで、早期解決につながることが多いです。
担当者は欠勤の理由によって対応が異なることを念頭に置き、まずは事実確認を優先しましょう。
第3章. 無断欠勤発生時の初動対応【会社がすべきこと】
無断欠勤が発生した際、「連絡もないのだから放置すればよい」と考えるのは危険です。初動対応の適切さが、後の労働トラブルを防ぐ鍵となります。
(1)まず本人へ連絡・安否確認を行う
会社から積極的に連絡を取ることは、安全配慮義務の観点からも重要です。電話・メール・ショートメッセージなど複数の手段で連絡を試み、その記録(送信履歴・スクリーンショット等)を必ず保存してください。連絡を怠ると、後に「会社から来なくてよいと言われた(解雇された)」と主張されるリスクがあります。
(2)連絡が取れない場合のステップ
本人に連絡が取れない場合は、以下の順で対応します。
・2日目以降:身元保証人・緊急連絡先に連絡し、本人への連絡や自宅訪問を依頼する
・自宅訪問 :担当者が安否確認のために訪問することも検討する。ただし、インターホンを鳴らす・外から様子を確認する程度にとどめ、無断で室内に立ち入ることは住居侵入罪にあたるため絶対に避けること
・近隣住民への聞き込み:プライバシー侵害と主張されるリスクがあるため控えるのが無難
(3)欠勤理由を確認し、厳重注意する
本人と連絡が取れた場合は、欠勤の理由を丁寧に確認します。正当な理由がない場合は、無断欠勤が労働契約違反にあたることを明確に伝え、書面または記録が残る方法で厳重注意を行います。
(4)状況の記録・証拠化を徹底する
連絡の日時・手段・内容、自宅訪問の状況など、すべての対応を記録しておきましょう。この記録が、後に懲戒処分や解雇を行う際の会社側の正当性を裏付ける重要な証拠となります。
第4章. 無断欠勤期間中の給与はどうなる?
(1)ノーワーク・ノーペイの原則
無断欠勤期間中の給与は、原則として支払う必要はありません。これを「ノーワーク・ノーペイの原則」といい、労働の提供がない日については賃金が発生しないという考え方です。
(2)有給休暇への振替は勝手にできない
給与を支払わないために済むからといって、会社が本人の申請なしに無断で欠勤日を年次有給休暇に振り替えることは違法です。これを許してしまうと、無断欠勤を有給休暇で正当化させることになり、後の懲戒処分の根拠を失う恐れがあります。有給休暇の取得はあくまで労働者本人の申請が前提です。
(3)賃金控除(調整的相殺)の注意点
締日の関係で、すでに支払った給与から欠勤分を後から控除(返還請求)する場合は、労働基準法上の注意が必要です。判例では、こうした「調整的相殺」が認められるためには、以下の要件を満たす必要があるとされています。
・ 過払いが生じた時期と合理的に接着した時期に控除を行うこと
・ あらかじめ労働者に予告していること
・ 控除額が労働者の経済生活を脅かすおそれがない程度であること
たとえば、1月の無断欠勤による過払い分を、本人の同意なく5月の給与から控除するといった対応は、違法と判断されるリスクがあります。欠勤控除は直近の給与支払いで速やかに行うことが実務上の原則です。
第5章. 懲戒処分・解雇を行う場合の手順と注意点
(1)懲戒処分の段階
無断欠勤に対する懲戒処分は、いきなり重い処分を科すのではなく、段階的に行うことが原則です。
| 処分の種類 | 内容 |
| 戒告・譴責 | 始末書の提出を求め、口頭または書面で注意する |
| 減給 | 給与の一部をカットする(上限あり) |
| 出勤停止 | 一定期間の出勤を禁止する |
| 懲戒解雇 | 労働契約を即時終了させる |
(2)懲戒解雇の目安「14日以上」とは
行政通達(昭23.11.11基発1637号)では、解雇予告手当が不要となる「労働者の責めに帰すべき事由」の一例として、「原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」が挙げられています。そのため、多くの会社の就業規則では「無断欠勤が14日以上に及んだとき」を懲戒解雇事由として定めています。ただし、自社の実情に合わせて「連続7日」「1か月のうち〇日以上」と定めることも可能です。
(3)メンタル不調・介護など正当な理由がある場合は要注意
形式的に14日以上の無断欠勤が続いていても、その背景にメンタルヘルス不調(うつ病など)や家族の介護といった正当な事情がある場合、懲戒解雇は無効となるリスクがあります。最高裁判例(日本ヒューレット・パッカード事件・平成24年)でも、精神科受診の勧奨や休職制度の検討を行わずになされた懲戒処分は無効と判断されています。無断欠勤の背景に何らかの事情が疑われる場合は、産業医や専門家への相談を検討しながら対応することが不可欠です。
(4)解雇通知の送付方法
解雇や退職扱いとする場合でも、本人への通知は必ず行います。居留守などで受け取りを拒否されるケースに備え、以下の方法が実務上有効です。
・配達証明付内容証明郵便:但し受取を拒否される場合もあります
・レターパックライトを利用し、投函の様子を動画で撮影・追跡番号を記録する
・ 同じ文書をPDF化してメールでも送付する
・ 身元保証人に経緯と文書の写しを送付する
・ 当事者が失踪して行方不明の場合、簡易裁判所に対し公示送達も検討する
これらを組み合わせることで、通知が本人の支配領域に到達したことを証明できます。
第6章. 就業規則の整備|自然退職規定を設けておく
連絡が一切取れず行方不明となった場合、解雇通知を届けることが困難になります。そのような事態に備えて、就業規則には以下のような規定を設けておくことが非常に有効です。
・「従業員の行方が不明となり、14日(または一定期間)以上連絡が取れないときは、その期間を経過した日をもって退職とする」
この「自然退職規定」は、解雇等の意思表示をする手段がなくなった場合に労働契約を終了させる手段として相当と判断されています。また、就業規則には「14日以上の連続無断欠勤」だけでなく、「1か月のうち〇日以上の無断欠勤」や「しばしば無断欠勤を繰り返したとき」といった規定を加えておくと、悪質なケースにも柔軟に対応できます。担当者は自社の就業規則を定期的に見直し、実態に即した規定となっているか確認しましょう。
第7章. まとめ|無断欠勤対応は「記録」と「手順」が命
無断欠勤への対応は、「〇日休んだからすぐ解雇」という単純なものではありません。本記事のポイントを整理すると以下のとおりです。
・ 無断欠勤は労務提供義務の不履行であり、契約違反にあたる
・ 発生時はまず安否確認・連絡を行い、すべての対応を記録する
・ 無断欠勤期間中の給与は支払い不要だが、有給振替や賃金控除には法的ルールがある
・ 懲戒解雇はメンタル不調など正当な事情の有無を必ず確認してから行う
・ 就業規則に自然退職規定や柔軟な欠勤日数規定を整備しておく
初動対応を適切に行い、記録を積み重ねることが、後の労働紛争における会社の正当性を守る最大の武器となります。無断欠勤への対応や就業規則の整備についてお悩みの経営者・担当者の方は、ぜひ一度専門家にご相談ください。
【投稿者:社会保険労務士 大髙 秀樹】
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