お知らせ

【2026年(令和8年)最新】雇用保険料率の変更点と実務の注意点(2026.3.22)

2026年(令和8年)最新】雇用保険料率の変更点と実務の注意点

 

1. はじめに:雇用保険と働く人を守るセーフティネット

 

雇用保険は、労働者が失業した場合や育児・介護などで働けなくなった場合に、生活の安定を支える国の社会保険制度です。全国の事業所に勤務する労働者が対象となり、事業主と労働者の双方が保険料を負担する仕組みです。

少子高齢化の進展や非正規雇用の拡大を背景に、雇用保険制度は近年、段階的な適用拡大と料率改定が続いています。2026年度には料率の引き下げが実施され、2028年(令和10年)には短時間労働者への適用拡大という大きな法改正も控えています。

本記事では、雇用保険料の算定の仕組みから、業種別の料率内訳、2026年度の改定内容、そして実務上の注意点まで、体系的に解説します。

 

 

2. 雇用保険の加入要件と対象者

 

雇用保険への加入が義務付けられる要件は、原則として以下の2つをともに満たす労働者です。

・週所定労働時間が20時間以上であること

31日以上の雇用見込みがあること

 

正社員はもちろん、パートタイマーやアルバイトであっても、この要件を満たせば加入対象となります。「短時間だから関係ない」と思い込んでいる事業主の方は、今一度、雇用実態を確認することをお勧めします。

なお、2028年(令和10年)には週10時間以上の短時間労働者にまで適用が拡大される予定です。パートやアルバイトを多く雇用している企業では、新たに数十名単位で手続きが必要になるケースもあり、今から準備を始めることが重要です。

 

 

3. 雇用保険料の内訳:「失業等給付分」と「雇用保険二事業分」

 

協会けんぽの健康保険料が「基本保険料」と「特定保険料」に分かれているように、雇用保険料も目的別に2つの要素で構成されています。

 

(1) 失業等給付・育児休業給付分とは

失業した際の「基本手当(失業給付)」、育休中の「育児休業給付金」、介護休業中の「介護休業給付金」、スキルアップ支援の「教育訓練給付金」など、労働者への直接給付を賄うための保険料分です。この部分は労使双方が折半して負担します。

 

(2) 雇用保険二事業分とは

「雇用安定事業」(雇用調整助成金など)と「能力開発事業」(職業訓練の支援など)に充てるための保険料分です。これらは事業主が労働者を雇用・育成するための支援に使われるため、事業主のみが負担します。労働者には負担が生じない点が、健康保険料との大きな違いです。

 

 (3) 2つの合計=業種別保険料率

 

| 保険料の種類        | 目的・拠出先      | 負担者      |

| 失業等給付・育児休業給付分 | 労働者への各種給付   | 労使折半     |

| 雇用保険二事業分      | 雇用安定・能力開発事業 | 事業主のみ    |

| 合 計           | 業種別保険料率     | 労使それぞれ負担 |

 

 

4. 業種別料率の格差と2026年度改定

 

雇用保険料率は業種によって異なります。これは、業種ごとの雇用の安定性や離職リスクの差を反映したものです。農林水産業や建設業は雇用の季節性が高く、失業給付の発生リスクが大きいため、一般の事業より高い料率が設定されています。

 

2026年度(令和8年度)の雇用保険料率>

 令和8年(2026年)41日から令和9331日まで適用される料率です。失業等給付の積立金が良好な状態にあることを踏まえ、前年度より全業種で1/1,000引き下げられています。

 

| 事業の種類        | 労働者負担  | 事業主負担  |  合計    |

| 一般の事業        |  5/1,000   | 8.5/1,000  |  13.5/1,000 |

| 農林水産・清酒製造の事業 |  6/1,000   | 9.5/1,000  |  15.5/1,000 |

| 建設の事業        |  6/1,000   | 10.5/1,000 |  16.5/1,000 |

 

※事業主負担には雇用保険二事業分が含まれます(一般・農林水産清酒製造は3.5/1,000、建設は4.5/1,000)。

 

最も低い一般の事業(13.5/1,000)と最も高い建設の事業(16.5/1,000)では3/1,000の差があり、給与月額30万円の労働者では年間で数千円から1万円以上の負担差が生じます。

 

 

5. 雇用保険料の計算方法

 

基本計算式 >

 ・雇用保険料 = 賃金総額 × 雇用保険料率

 

健康保険の「標準報酬月額」のような簡素化区分は使わず、実際の賃金総額にそのまま料率をかけるシンプルな方式です。

 

【賃金総額に含まれるもの(計算対象)】 

・基本給、役職手当、家族手当、住宅手当

・残業手当(時間外・休日・深夜)

・通勤手当

・賞与(ボーナス)

 

【賃金総額に含まれないもの(計算対象外)】

・慶弔見舞金・結婚祝い金などの恩恵的給付

・出張旅費・実費弁済に相当するもの

・傷病手当金などの社会保険給付

 

 なお、健康保険料と同様に、通勤手当は全額が賃金総額に含まれます。所得税の非課税枠とは異なる点にご注意ください。

 

< 計算例(一般の事業・月給30万円の場合)>

・ 労働者負担:300,000 × 5/1,000  1,500

・ 事業主負担:300,000 × 8.5/1,000 2,550

 

< 端数処理のルール>

計算結果に1円未満の端数が出た場合は以下の通りです。

50銭以下     ⇒ 切り捨て

501厘以上 ⇒ 切り上げ

 

ただし、労使協定等で別途定めがある場合はその取り決めに従います。端数処理の誤りが積み重なると、年間で過少・過大徴収が発生することがあるため、計算ルールを社内で統一しておくことが重要です。

 

 

 

6. 20264月改定:料率変更のタイミングに要注意

 

雇用保険料は「支払いが確定した賃金」に対してかかるので、202641日以降に締日を迎える給与から、たとえ実際にまだ支払っていなくても改定後の雇用保険料率を適用しなければなりません。

月末締め翌月25日払いの会社であれば、430日に締日が来る給与(41日~430日分・525日支払い)から雇用保険料率の変更が必要です。

また、20日締め当月末日払いの会社であれば、420日に締日が来る給与(321日~420日分・430日支払い)から雇用保険料率を変更する必要があるので注意しましょう。

 

 

7. 雇用保険料の納付:概算・確定と年度更新

 

(1) 概算保険料

雇用保険料(労働保険料)は、毎年41日から翌年331日の1年間を「保険年度」として計算します。年度の始まりに、その年度に支払う賃金総額を見込みで計算した保険料(概算保険料)を先払い(前納)します。

・概算保険料 = 前年度の賃金総額(見込み額)× 保険料率

 

(2) 確定保険料と精算

翌年度になり実際の賃金総額が確定した時点で、実績に基づく正確な保険料(確定保険料)を計算し、差額を精算します。

・ 概算保険料 < 確定保険料 ⇒ 不足分を追加納付

・ 概算保険料 > 確定保険料 ⇒ 超過分を翌年度に充当または返還

 

(3) 納付方法・期限

概算保険料・確定保険料は「労働保険の年度更新」の手続きとあわせて申告・納付します。毎年61日〜710日が申告・納付期限です。

また保険料額が40万円(または20万円)以上の場合は、3回に分けた分割納付(延納)も可能です。

 

 

8. コンプライアンス上の注意点

 

雇用保険料の計算誤りや届け出漏れは、行政指導・追徴の対象となるだけでなく、従業員が失業給付等を受けられないという深刻な不利益を招くことがあります。

特に注意が必要なのは以下の点です。

 

・賞与の計算漏れ:賞与(ボーナス)にも同じ料率で雇用保険料が発生します。毎月の給与計算とは別に、賞与支給時にも控除・納付が必要です。

・短時間労働者の加入漏れ:「パートだから加入不要」という思い込みは禁物です。週20時間以上・31日以上の雇用見込みがある場合は加入義務があります。2028年の適用拡大も見据え、雇用実態の棚卸しを今から行うことを推奨します。

・通勤手当の取り扱い:所得税上の非課税枠と社会保険上の取り扱いは異なります。雇用保険料の算定では通勤手当の全額が賃金総額に含まれる点を常に意識してください。

 

 

9. おわりに:制度の変化を「経営の安心」に変えるために

 

2026年度は雇用保険料率の引き下げに加え、2028年には短時間労働者への適用拡大という大きな制度変更が控えています。社会保険制度は従業員の生活を守る大切なセーフティネットですが、その仕組みは年々複雑化しています。

経営者様や担当者様がこうした制度変更の荒波に振り回されることなく、本来の業務に集中できるようサポートすることこそが、私たち社会保険労務士の使命です。

当事務所では、最新の法改正に基づいた正確なアドバイスと、現場に即した実務支援を行っております。「今回の改定で自社の負担はどう変わるのか?」「給与計算の設定に不安がある」といったご相談がございましたら、どうぞお気軽にお声がけください。共に、従業員が安心して働ける環境づくりを進めてまいりましょう。

 

 

                 【投稿者:社会保険労務士 大髙 秀樹】

 

 

👉ご相談なら東京・中央区の社労士 大高労務管理事務所へ

(  https://www.ohtaka-sr.jp/ )

 

 

・雇用契約書との違いは?労働条件通知書の「試用期間」や「更新上限」でトラブルを防ぐ!2024年新ルールに即した実務ガイド

( https://www.ohtaka-sr.jp/info/20260322105833.html )

・協会けんぽ 健康保険料の「仕組み」と2026年度からの「変更点」を徹底解説 ~基本・特定保険料から子ども・子育て支援金の開始まで~

( https://www.ohtaka-sr.jp/info/20250802210052.html )

 

・【20264月施行】「130万円の壁」の判定方法が変わる!扶養認定の新ルール完全解説

( https://www.ohtaka-sr.jp/info/20260311153408.html )

 

・新制度【子ども・子育て支援金】はいつから?いくら引く?専門家がいれば「いつもと変わらない」の給与計算

( https://www.ohtaka-sr.jp/info/20260309165244.html )

ページトップ