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「育児時短就業給付金」の制度概要・受給要件・申請手続きまとめ~時短勤務中の賃金低下を補填する新しい雇用保険給付~(2026.3.26)

1. はじめに:育児時短就業給付金が創設された背景

 

産休・育休から職場に復帰した後、子どもが小さいうちは「時短勤務」を活用したいと考える従業員は少なくありません。しかし、時短勤務を選ぶと労働時間の減少に伴い給与も下がるため、生活費への影響を懸念して、本来は必要な時短勤務を利用できないというケースがありました。

こうした課題を解消するため、2025(令和7)年41日より、雇用保険の新たな給付として「育児時短就業給付金」が創設されました。時短勤務に伴う賃金低下の一部を補填することで、育児と仕事を両立しながら働き続けやすい環境を、経済面からサポートすることが目的です。

 

本記事では、中小企業の経営者・人事労務担当者の方に向けて、受給要件から支給額の計算方法、申請手続きの実務まで、わかりやすく解説します。

 

 

2. 育児時短就業給付金とは?もらえる金額の基本

 

育児時短就業給付金とは、2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して就業(育児時短就業)した場合に支給される雇用保険の給付金です。

支給額の基本的な考え方は、「育児時短就業中の各月に支払われた賃金額の10%相当額」です。ただし、支給額と各月の賃金額の合計が、時短就業を開始する前の賃金水準を超えないよう、自動的に調整される仕組みになっています。

なお、申請は原則として事業主が行うものですが、従業員本人の希望による直接申請も認められています。

 

 

3. 受給するための要件:「受給資格」と「支給要件」の2段階

 

受給するためには、まず受給資格を満たしたうえで、毎月の支給要件もクリアする必要があります。

 

(1) 受給資格(入口の要件)

以下の①②をともに満たす必要があります。

 

① 2歳未満の子を養育するために育児時短就業をしている、雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者であること。

次のいずれかに該当すること。

・ 育児休業給付の対象となった育休から引き続き育児時短就業を開始したこと(育休終了日と時短開始日の間が14日以内の場合を含む)

・ 時短就業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上(ない場合は労働時間80時間以上)の月が12ヶ月以上あること

 

(2) 各月の支給要件(毎月の確認事項)

支給対象の各月について、以下のすべてを満たす必要があります。

・ 月の初日から末日まで継続して被保険者であること(月途中の離職は対象外)

・ 週所定労働時間を短縮して就業した期間がある月であること

・ 育児休業給付・介護休業給付をその月の初日から末日まで受給していないこと

・ 高年齢雇用継続給付の受給対象となっていないこと

 

 

4. 「時短就業」の範囲と週20時間未満の重要な注意点

 

短縮後の週所定労働時間に上限・下限は設けられていませんが、実務上、見落とせない注意点があります。

 

(1)【重要】週20時間未満になる場合の例外措置

原則として、時短後の週所定労働時間が20時間を下回ると雇用保険の被保険者資格を喪失するため、給付金の対象外となります。

ただし、「子が小学校就学の始期に達するまでに、週所定労働時間が20時間以上の労働条件に復帰することが前提」であることが、就業規則等の書面で確認できる場合に限り、被保険者資格が継続し対象となります。

この特例を活用する場合は、就業規則や労働条件通知書の整備が必要です。時短勤務制度の規程を見直していない場合は、早急に確認することをお勧めします。

就業規則には、『育児短時間勤務終了後は、週所定労働時間20時間以上のフルタイム勤務に復帰するものとする』といった一文を明記しておくことが、受給を確実にするポイントです。

 

(2) シフト制の場合

シフト制では実際の労働時間に基づく週平均で短縮を確認します。フレックスタイム制・変形労働時間制・裁量労働制についても、それぞれ定められた算定式により短縮が確認できれば対象となります。

 

(3) 変形労働時間制の適用を受けている場合

 対象期間の総労働時間を短縮して就業するときは、育児時短就業と取り扱います。対象期間の総労働時間を変更しないときの対象期間中の1週間の平均労働時間を下回る期間(いわゆる閑散期)であっても、総労働時間を短縮していない場合は育児時短就業と取り扱いません。

 

(4) フレックスタイム制の適用を受けている場合

 清算期間における総労働時間を短縮して就業するときは、育児時短就業と取り扱います。清算期間における総労働時間は変更せずに、フレキシブルタイムの一部又は全部の勤務を行わないことで、清算期間毎に欠勤控除を受けるときは、育児時短就業と取り扱いません。

 

 

5. 支給対象期間と支給額の計算・支給されないケース

 

(1) 支給対象期間

育児時短就業給付金は、原則として育児時短就業を開始した日の属する月から育児時短就業を終了した日の属する月までの各暦月について支給します。この各暦月のことを「支給対象月」といいます。ただし、次の①~④の日の属する月までが支給対象月となります。

・ 子が2歳に達する日(2歳の誕生日の前日)の前日

・ 産前産後休業・育児休業・介護休業を開始した日の前日

・ 別の子のために時短就業を開始した日の前月末日

 

(2) 支給額の計算方法

支給額は、時短開始前の賃金(開始時賃金月額)と時短中の賃金低下率に応じて決まります。

・ 時短中の賃金が開始時賃金の90%以下の場合

支給額 = 支給対象月の賃金額 × 10

例えば、時短で額面賃金が20万円になった場合、毎月2万円(10%)が非課税で支給されます。これは手取り額の減少を大きくカバーする、非常に手厚いサポートと言えます。

・ 時短中の賃金が開始時賃金の90%超~100%未満の場合

賃金と支給額の合計が開始時賃金月額を超えないよう、所定の計算式で支給率が細かく調整されます。

 

(3) 支給されないケース(不支給要件)

以下の場合は給付金が支給されません。

| ケース          | 内容                        |

| ① 賃金が低下していない | 時短中の賃金が開始時の100%以上の場合       |

| ② 賃金が高すぎる    | 時短中の賃金が支給限度額(471,393円)以上の場合  |

| ③ 支給額が極めて少ない | 算出された支給額が最低限度額(2,411円)以下の場合 |

 

※各限度額は2026731日までの額。毎年81日に改定されます。

 

 

6. 企業が行うべき申請手続きの流れ

 

(1) 手続きのタイミング

初回申請は、最初の支給対象月の初日から起算して4ヶ月以内に、事業所管轄のハローワークへ提出します。

2回目以降は、原則として2つの支給対象月について2ヶ月ごとに、指定された申請期間内(対象月初日から4ヶ月以内)に申請します。

 

(2) 初回申請に必要な主な書類

・ 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書・所定労働時間短縮開始時賃金証明書

  育休から引き続き時短を開始した場合は不要

・ 育児時短就業給付受給資格確認票・(初回)育児時短就業給付金支給申請書

・ 添付書類:賃金台帳、出勤簿、育児短時間勤務申出書、就業規則など労働条件を確認できる書類

・ 母子手帳は、『出産予定日(または誕生日)』がわかるページのコピーが必要

 

 

7. よくあるご質問

 

Q1. 一度通常勤務に戻った後、再び時短勤務を開始した場合も対象になりますか?

Aはい、対象となります。 回数制限はなく、各月の要件を満たせば再び給付を受けられます。この場合、開始時賃金月額は1回目と同じ額を使用し、「受給資格確認」の手続きは省略して支給申請書の提出のみで再開できます。

 

Q2. 特別な労働時間制度の適用を受けている場合などは、申請書の「本来の週所定労働時間」、支給対象月の「週所定労働時間」はどのように計算すればいいですか。

A以下のとおりです。

【フレックスタイム制、変形労働時間制の適用を受けている場合】

・清算期間(対象期間)の総労働時間 ÷ 清算期間(対象期間)の月数 × 12 ÷ 52

【裁量労働者制の適用を受けている場合】

・1日のみなし労働時間 × 5日

【いわゆる「シフト制」で就労する場合】

・該当期間の実際の労働時間÷ (該当期間2の暦日数 ÷ 7日)

 

 

8. おわりに:制度を正しく活用するために

 

育児時短就業給付金は、育児と仕事の両立を経済面から支える重要な制度です。しかし、週20時間未満特例に対応した就業規則の整備や、毎月の賃金実績に基づく申請手続きなど、企業側の労務管理負担は確実に増加します。

特に中小企業では、専任の労務担当者がいないケースも多く、申請漏れや書類不備が生じやすい制度でもあります。

「自社の従業員は対象になるのか?」「就業規則の整備はどうすればよいか?」「申請手続きをアウトソーシングしたい」といったご不安やご疑問がございましたら、ぜひ専門家へご相談ください。従業員が安心して育児と仕事を両立できる職場環境づくりを、共に進めてまいりましょう。

 

 

   【投稿者:社会保険労務士 大髙 秀樹】

 

 

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