介護休業給付金とは? 制度の概要や受給要件・申請方法・受給のポイントを解説(2026.3.24)

高齢化が進む日本では、働き盛りの従業員が突然、家族の介護を担わなければならない状況に直面するケースが増えています。いわゆる「介護離職」は本人にとって大きな痛手であるだけでなく、企業にとっても経験豊富な人材を失う損失です。
こうした事態を防ぐために設けられているのが「介護休業制度」であり、その休業期間中の収入を支える仕組みが「介護休業給付金」です。
本記事では、まず法律上の介護休業制度の全体像を解説し、その後に介護休業給付金の受給要件・計算方法・申請手続きまでを、中小企業の経営者・担当者向けにわかりやすく解説します。
第1章. 「介護休業」制度とは
(1)介護休業とは
介護休業とは、育児・介護休業法に基づき、要介護状態にある対象家族を介護するために取得できる休業制度です。よく誤解されますが、介護休業は「介護そのものを長期にわたって行うための休業」ではありません。その本来の目的は、施設の選定・介護サービスの契約・家族間での役割分担の調整など、職場復帰に向けた介護体制を構築するための期間として位置づけられています。
また、企業は従業員から介護休業の申し出を受けた際、「介護休業取扱通知書」を速やかに交付する義務があります。担当者は事務処理フローを整備しておきましょう。
(2)介護休業法の介護休業の対象となる労働者
休業後も雇用が継続される見込みがある労働者が対象です。有期雇用労働者(パート・契約社員等)については、「介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にはあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでないことが必要です。
なお、以下の労働者については、労使協定を締結することで対象外とすることが認められています。
・ 入社1年未満の労働者
・93日以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
・ 週の所定労働日数が2日以下の労働者
(3)対象となる家族
| 対象家族 | 備考 |
| 配偶者 | 事実婚を含む |
| 父母 | 養父母を含む |
| 子 | 養子を含む |
| 配偶者の父母 | 養父母を含む |
| 祖父母 | ― |
| 兄弟姉妹 | ― |
| 孫 | ― |
(4)利用期間・回数
対象家族1人につき、通算93日・最大3回まで分割取得が可能です。一度93日を使い切ると、同じ家族に対して要介護状態が重度化した場合でも再度取得することはできません。従業員への制度説明の際には、この点を必ず伝えるようにしてください。
(5)手続方法
従業員は、休業開始予定日の2週間前までに、書面等で事業主へ申し出ることが必要です。申し出の際は、休業の開始日と終了日を明示することが求められます。事業主は申し出を受けたら、速やかに「介護休業取扱通知書」を交付しなければなりません。
第2章. 介護休業と介護休暇の違い
(1)2つの制度の違い
「介護休業」と「介護休暇」は名称が似ていますが、別の制度です。混同しないよう、担当者はしっかり区別して従業員に案内しましょう。
| | 介護休業 | 介護休暇 |
| 根拠法 | 育児・介護休業法 | 育児・介護休業法 |
| 取得単位 | まとまった期間 | 1日・半日単位 |
| 上限 | 対象家族1人につき通算93日・最大3回 | 年間5日(2人以上は10日)|
| 主な目的 | 介護体制の構築・整備 | 通院付き添い・介護対応 |
| 給付金 | あり(介護休業給付金) | なし |
(2)給付金が支給されるのは介護休業のみ
介護休業給付金の支給対象となるのは「介護休業」のみです。介護休暇には給付金が支給されません。短期的な介護対応には介護休暇を、まとまった介護体制の整備には介護休業を、とそれぞれの制度を目的に応じて使い分けることが重要です。
第3章. 介護休業給付金とは
(1)制度の概要
介護休業給付金とは、雇用保険の被保険者が介護休業を取得した際に、一定の要件を満たすことで雇用保険から支給される給付金です。
介護休業中は給与が支払われないケースがほとんどです。収入減少への不安から、本来取得できる休業を諦めてしまう従業員も少なくありません。この給付金は、休業中の生活を下支えし、従業員が安心して介護体制を整えながら職場に戻れるよう支援することを目的としています。
(2)税金・社会保険料の取り扱い
介護休業給付金は非課税のため、所得税はかかりません。ただし、社会保険料(健康保険・厚生年金)については免除されない点に注意が必要です。育児休業とは異なり、介護休業中の社会保険料免除制度は設けられていないため、休業期間中も保険料の負担が続きます。従業員への事前説明の際には、この点も合わせて案内しておきましょう。
第4章. 介護休業給付金の受給要件
(1)主な受給要件
介護休業給付金を受給するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
・ 雇用保険の被保険者であること
・ 介護休業開始日前の2年間に被保険者期間が12か月以上あること
(1か月=賃金支払基礎日数が11日以上ある月)
・ 対象家族が「2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態」にあること
・ 休業の開始日と終了日を事業主に明示して申し出た休業であること
・ 休業終了後に職場復帰することが前提であること
(2)有期雇用労働者の追加要件
有期雇用労働者の場合は、上記に加えて「介護休業開始から93日経過後も一定期間、雇用が継続される見込みがあること」も要件となります。入社間もない従業員や雇用期間の短い従業員については、事前に要件を確認しておくことが重要です。
第5章. 介護休業給付金が支払われないのはどんなとき?
(1)産前・産後の休業中である場合
産前・産後休業中に介護休業を開始することはできません。また、介護休業期間中に産前・産後休業や育児休業が新たに始まった場合、介護休業はその開始日の前日に終了したとみなされ、それ以降の給付金は支給されません。
(2)介護休業後に退職を予定している場合
介護休業給付金は、休業後の職場復帰を大前提とした制度です。休業取得当初から退職が決まっている場合は支給対象となりません。従業員から休業申請を受ける際は、退職の意向がないかを確認しておくことが重要です。
(3)介護休業期間中に一定条件下で就労した場合
休業中であっても就労すること自体は認められていますが、1支給単位期間(1か月)内の就業日数が10日を超えた場合は給付金が支給されません。また、就業による賃金が休業前賃金の80%以上に達した場合も支給対象外となります。副業・兼業先での就労日数も含まれるため、注意が必要です。
第6章. 介護休業給付金の支給額はいくら?
(1)支給額の計算方法
支給額は以下の計算式で算出します。
・休業開始時賃金日額 × 支給日数(原則30日)× 67%
・「休業開始時賃金日額」とは、介護休業開始前6か月間の賃金総額(賞与を除く)を180で割った額です。
① 休業期間中に賃金が支払われていない場合
上記の計算式がそのまま適用され、休業前賃金の約67%が支給されます。
② 休業期間中に賃金が支払われている場合
会社から賃金が支払われている場合は、その額に応じて以下のとおり調整されます。
| 支払われた賃金の割合 | 給付金の扱い |
| 賃金月額の13%以下 | 67%相当額を全額支給 |
| 賃金月額の13%超〜80%未満 | 「賃金月額の80%」-「支払賃金額」の差額を支給 |
| 賃金月額の80%以上 | 支給なし(0円) |
つまり、賃金と給付金を合わせた合計額が、休業前賃金の最大80%になるよう設計されています。
(2)支給額の具体例
月給30万円の従業員が、休業中に賃金が支払われない場合の支給額の目安は以下のとおりです。
・ 賃金日額(300,000円 ÷ 30日)× 30日 × 67% = 約201,000円/月
なお、支給額には上限・下限があります。令和8年7月31日までの規定では、賃金月額の上限は532,200円(給付上限額:356,574円)となっています。
第7章. 介護休業給付金の申請方法と手順
(1)給付金の申請先と申請期限
申請は原則として事業主を経由し、事業所の所在地を管轄するハローワーク(公共職業安定所)に提出します。電子申請にも対応しています。提出期限は、介護休業終了日の翌日から2か月を経過する日の属する月の末日までです。
・ 例:7月25日に休業終了 → 期限は9月30日
期限を過ぎると原則として受給できなくなる場合があります。複数回に分けて取得した場合は、各回の終了ごとに期限が発生するため、担当者は期限管理を徹底してください。
(2)給付金申請に必要な書類
【受給資格確認に必要な書類】
・ 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
・ 賃金台帳・出勤簿等
【支給申請に必要な書類】
・ 介護休業給付金支給申請書
・ 従業員が提出した介護休業申出書
・ 対象家族との続柄が確認できる書類(住民票記載事項証明書等)
・ 出勤簿・タイムカード等(休業日数の確認用)
・ 賃金台帳等(賃金支払状況の確認用)
・ マイナンバー
(3)給付金支給の流れ
1. 従業員が事業主へ介護休業を申し出る
2. 事業主が「介護休業取扱通知書」を交付する(法律上の義務)
3. 介護休業終了後、事業主がハローワークへ申請書類を提出する
4. ハローワークが審査・支給決定を行う
5. 支給決定から約1週間で、従業員の指定口座へ振り込まれる
第8章. 介護休業給付金利用時のポイントと注意点
(1)給付金の支給は介護休業終了後
給付金は休業中ではなく、休業終了後にまとめて申請・支給されます。休業中の生活費は一時的に自己資金でまかなう必要があるため、従業員への事前周知が大切です。
(2)介護休業期間が2週間未満でも給付金は受給可能
「2週間以上常時介護を必要とする状態」という要件は、対象家族の状態についての要件です。介護休業の取得期間が2週間以上でなければならないわけではありません。例えば、対象家族が3か月の介護を必要とする状態の中で、従業員本人は最初の10日間だけ休業し、その後は施設に入所させるといったケースでも、給付金を受給することが可能です。
(3)同じ被介護者に対して複数人が介護する場合も給付金が支払われる
夫婦がそれぞれ同じ対象家族の介護のために休業を取得した場合も、それぞれが受給要件を満たしていれば各自が給付金を受給できます。企業内で複数の従業員が同じ状況になるケースもあるため、担当者はこの点を把握しておきましょう。
(4)申請期限は厳守
休業終了日の翌日から2か月を経過する日の属する月末が申請期限です。複数回取得した場合は各回ごとに期限が発生するため、見落としのないようスケジュール管理を徹底してください。
(5)休業中の就労制限に注意
1か月の支給単位期間中に就業日数が10日を超えると給付対象外となります。副業・兼業先での就労日数も含まれるため、該当する従業員がいる場合は特に注意が必要です。
第9章. 介護休業給付金が貰えない場合とその対処法
(1)支給対象者が雇用保険に加入していない
雇用保険の加入要件を満たしていない従業員(一部の短時間勤務者等)は受給できません。雇用保険の加入状況は、採用時に必ず確認しておきましょう。
(2)休業前の勤務期間が不足している
休業開始日前2年間に被保険者期間が12か月未満の場合は受給できません。入社間もない従業員や離職期間が長かった従業員はこの要件を満たせないことがあります。
(3)賃金額が介護休業前の賃金の80%以上支払われている
休業中も賃金が手厚く支払われている場合、給付金がゼロになることがあります。就業規則の休業中の賃金規定を事前に確認しておきましょう。
(4)貰えない場合の対処法
給付金を受給できない場合でも、以下のような対応策があります。
・短時間勤務・在宅勤務への切り替え:所定労働時間を短縮しながら就業を継続する
・介護休暇の活用:短期的な対応には年間5日の介護休暇を利用する
・自治体・他制度の活用:自治体の介護支援サービスや企業独自の特別休暇制度なども検討する
どの制度が最適かの判断に迷う場合は、専門家への相談が有効です。
第10章. まとめ
本記事で解説した介護休業・介護休業給付金制度のポイントを以下に整理します。
| 項目 | 内容 |
| 介護休業の目的 | 介護体制の構築・整備(職場復帰が前提) |
| 利用期間・回数 | 対象家族1人につき通算93日・最大3回 |
| 給付金の支給額 | 休業前賃金の約67%(上限:月356,574円) |
| 申請先 | 事業主経由でハローワークへ |
| 申請期限 | 休業終了日翌日から2か月を経過する日の属する月末 |
| 給付金の課税 | 非課税(社会保険料の免除はなし) |
| 就労制限 | 支給単位期間中の就業日数10日以下 |
介護休業・介護休業給付金の制度は、従業員が安心して働き続けるための重要なセーフティネットです。申請期限の管理や複雑な賃金計算、従業員への制度説明など、実務上の対応にお困りの際は、ぜひ専門家までお気軽にご相談ください。
【投稿者:社会保険労務士 大髙 秀樹】
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