高年齢雇用継続給付とは?2025年4月からの支給率変更と今後の運用・申請手続きの注意点を解説(2026.3.24)

高年齢雇用継続給付とは?2025年4月からの支給率変更と今後の運用・申請手続きの注意点を解説
60歳以降も働き続ける従業員の給与が下がったとき、国から給付金が受け取れることをご存じでしょうか。それが「高年齢雇用継続給付」です。この給付金は、会社の負担を増やすことなく、シニア社員の手取りを守る重要な制度です。ただし2025年4月から段階的に縮小が始まっており、将来的には廃止が予定されています。本記事では、中小企業の経営者・事務担当者が知っておきたいポイントを、手続き方法・計算例も含めてわかりやすく解説します。
第1章. 高年齢雇用継続給付とは
高年齢雇用継続給付とは、60歳以降も雇用を継続している従業員の賃金が、60歳時点と比べて75%未満に低下した場合に、雇用保険から支給される給付金です。
定年再雇用などで給与が下がっても従業員が働き続けやすくするための制度であり、給付金は会社ではなく従業員本人の口座に直接振り込まれます。会社にとっては「コストゼロでシニア人材の定着を支援できる制度」です。
(1)高年齢雇用継続基本給付金の対象者
<60歳到達日において被保険者であった場合>
以下のすべての要件を満たす方が対象となります。
・ 年齢:60歳以上65歳未満の雇用保険一般被保険者
・ 加入期間:雇用保険の被保険者であった期間が通算5年以上あること
・ 賃金の低下:60歳到達時点の賃金と比べ、60歳以後の賃金が75%未満に低下していること
<60歳到達日において被保険者でなく、それ以降の再就職により被保険者となった場合>
・ 60歳到達前の離職した時点で、被保険者であった期間が通算して5年以上あること
・ 60歳到達前の離職した日の翌日が、60歳到達後に再雇用された日の前日から起算して1年以内にあること
・ 上記の期間に失業手当・再就職手当等を受給していないこと
(2)高年齢再就職給付金について
雇用保険の基本手当(失業給付)を受給した後、60歳以降に別の会社へ再就職した方を対象とする給付金です。再就職日の前日時点で基本手当の支給残日数が100日以上残っていることが要件です。また、再就職手当との併給はできないため、どちらかを選択する必要があります。
(3)高年齢雇用継続基本給付金や高年齢再就職給付金は、いつまで受け取れるのか?
(A)高年齢雇用継続基本給付金:60歳に到達した月から65歳に達する月まで、最長5年間受け取ることができます。
(B)高年齢再就職給付金:再就職時の基本手当の支給残日数によって異なります。
・ 残日数200日以上:再就職日の翌日から最大2年間
・ 残日数100日以上200日未満:再就職日の翌日から最大1年間
・ いずれも65歳に達した月で支給終了となります。
(4) 振込日はいつ?
支給申請後、ハローワークで支給決定がなされてから概ね1週間程度で、従業員本人が指定した金融機関口座に振り込まれます。申請は原則2か月に一度まとめて行うため、申請のタイミングによって実際の振込日が前後します。申請月の末頃に申請し、翌月中旬〜下旬に振り込まれるケースが一般的です。
第2章. 高年齢雇用継続給付の廃止はいつから?
2025年(令和7年)4月1日より、高年齢雇用継続給付の支給率が段階的に引き下げられています。最終的には廃止が予定されており、早めの対応・情報把握が求められます。
(1) 高年齢雇用継続給付が縮小される背景
この制度は高齢者の就労促進を目的として設けられましたが、近年では以下の観点から見直しが進んでいます。
・60歳以降の雇用環境が整備され、制度の役割が薄れてきた
・ 同一労働同一賃金の観点から、「賃金を下げて給付金で補う」仕組みへの批判
・ 高齢化社会における社会保障費の見直し
こうした背景を踏まえ、2025年4月の法改正により、60歳到達時期によって支給率の上限が変わっています。
第3章. 高年齢雇用継続給付はいくらもらえる?
(1) 高年齢雇用継続給付の計算方法
給付金の額は、「60歳以後に支払われた賃金額×支給率」で計算されます。支給率は60歳時点の賃金と比較した低下率(現在の賃金÷60歳時賃金)によって決まります。
なお、60歳時の「賃金月額」は60歳到達前6か月間の平均賃金をもとに算定され、上限508,200円・下限90,420円の範囲内で設定されます(令和7年度の目安)。また、月の支払賃金が386,922円以上の場合は給付金が支給されません。
【高年齢雇用継続給付の支給率の早見表】
※2025年4月1日以降に受給資格要件を満たす方について支給率の上限が10%に変更。2025年3月31日以前に受給資格要件を満たす方については旧基準(最大15%)が継続適用されます。
<支給金額の例>
【ケース①】2025年4月以降に60歳に達した方(新基準・支給率最大10%)
・60歳時の賃金月額:30万円
・ 現在の賃金(再雇用後):18万円
・ 低下率:18万円 ÷ 30万円 = 60%(64%以下)
・ 支給額:18万円 × 10% = 18,000円/月
【ケース②】2025年3月以前に60歳に達した方(旧基準・支給率最大15%)
・60歳時の賃金月額:30万円
・ 現在の賃金(再雇用後):18万円
・ 低下率:18万円 ÷ 30万円 = 60%(61%以下)
・ 支給額:18万円 × 15% = 27,000円/月
※病気やケガによる欠勤・遅刻、事業場の休業等で賃金が減った場合は「みなし賃金」として減額分を加算して計算します。たとえば実際の支払い賃金が18万円でも欠勤控除が3万円あれば、21万円として低下率を判定します。
第4章. 高年齢雇用継続給付の申請方法
高年齢雇用継続給付は従業員本人に代わり、原則として事業主(会社)がハローワークへ申請します。電子申請も可能です。
<高年齢雇用継続基本給付金の場合>
【初回申請時に必要な書類】
・ 高年齢雇用継続給付支給申請書(マイナンバー記載)
・ 払渡希望金融機関指定届
・ 高年齢雇用継続給付受給資格確認票
・ 雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書
・ 添付書類:賃金台帳、労働者名簿、出勤簿など(記載内容確認用)
・ 年齢確認書類:運転免許証または住民票の写し等(マイナンバー届出済みの場合は省略可)
【申請の流れ】
・STEP1:初回申請前に受給資格確認(賃金証明書の届出)を行う
・ STEP2:最初の支給対象月の初日から4か月以内に初回申請
・STEP3:以後は2か月に一度、ハローワーク指定の支給申請月に申請
<高年齢再就職給付金の場合>
基本的な手続きは高年齢雇用継続基本給付金と同様ですが、再就職後の初回申請時に「再就職した事実」と「基本手当の支給残日数」を確認できる書類等も必要になります。また再就職手当との選択となるため、どちらが有利かを事前に確認の上、申請を行ってください。
第5章. 高年齢雇用継続給付の廃止スケジュール【いつから?】
(1) 2025年4月1日から段階的縮小開始
2025年(令和7年)4月1日以降に60歳に達した方から、支給率の上限が従来の15%から10%に引き下げられました。これが第一段階の縮小です。
<重要なポイント>
・2025年3月31日以前に受給資格要件を満たす方:旧基準(最大15%)が引き続き適用
・2025年4月1日以降に受給資格要件を満たす方:新基準(最大10%)が適用
・60歳到達日が境界線となるため、従業員の生年月日を確認することが重要(60歳時に5年要件を満たさない場合には5年到達時期)
<経過措置の対象者>
2025年3月31日以前にすでに60歳を迎えていた方については、引き続き旧基準(最大15%)が適用されます。新たに60歳になる従業員については、2025年4月以降は10%上限の新基準が適用されますので、今後の賃金設計の見直しが必要になる場合があります。
(2) 完全廃止への道筋
現時点では完全廃止の具体的な時期は法令上明示されていませんが、政府の方針として段階的な縮小・廃止が示されています。今後も法改正の動向を注視し、60歳以降の賃金設計や人事制度の見直しを進めておくことが重要です。是非、専門家への相談をお勧めします。
第6章. 雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整
60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金を受給しながら、高年齢雇用継続給付も受け取る場合、年金の一部が支給停止される「併給調整」が行われます。
(1) 支給停止の基本的な仕組み
在職老齢年金制度による支給停止に加えて、高年齢雇用継続給付を受給することで、さらに老齢厚生年金の一部が停止されます。
・2025年4月以降の基準:停止される年金額は最高で標準報酬月額の4%相当
・2025年3月以前の基準:停止される年金額は最高で標準報酬月額の6%相当
具体的には、現在の賃金(標準報酬月額)が60歳時の賃金月額の64%以下の場合に標準報酬月額の4%が停止され、64%超〜75%未満の場合は逓減した率が適用されます。75%以上であれば給付金も支給されないため、調整も行われません。
(2)注意事項
・ 高年齢雇用継続給付の支給申請を行わなかった月は、年金の併給調整は行われません
・ 育児休業給付または介護休業給付の対象となっている月は、高年齢雇用継続給付は受給できません
・ 特別支給の老齢厚生年金の受給者がいる場合は、日本年金機構への届出も必要になることがあります。詳細は管轄のハローワークまたは専門家にご相談ください
第7章. まとめ
高年齢雇用継続給付は、長年日本の高年齢者雇用を支えてきた重要な制度ですが、2025年(令和7年)4月を境に大きな転換期を迎えました。
具体的な時期は未定ですが、制度は廃止方向にありますので給付金に頼りすぎない賃金設計への移行が今後の課題となります。
これからの「段階的な縮小」を見据えた人事制度の見直しは、企業の負担を抑えつつシニア人材を活かすために避けては通れません。
「自社の場合はどうなるのか?」「今後の賃金設計をどう変えるべきか?」など、ご不安な点があれば、ぜひ専門家にご相談ください。
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